ホーム・デポ

━━━━vol.295 ━

■『ロジスティクス思考的経営話(物流話)』powered by e-LogiT■

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| 今回の物流話 | 

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      株式会社イー・ロジット コンサルタント 鈴木 まさゆき



今回は「ニューヨーク・ダウ(ダウ工業株30種)」の銘柄に

約20年前に選ばれた、米国最大の住宅リフォームの小売チェーン、

「ホーム・デポ」に関する本を紹介します。

 

・「ホーム・デポ 驚異の成長物語

  ~ゼロから3兆円企業をつくった男たち~」

著者:創業者バーニー・マーカス、アーサー・ブランク、ボブ・アンデルマン

訳者:島田陽介氏

ダイヤモンド社、初版2000年

です。



創業者が、本のまえがきに

「20年後に真実を思い返したくなる日がくるもしれない

 本書を著したほんとうのねらいは、ここにある」と記載したのが1998年!

 

ちょうど20年後の今、

「アマゾン・エフェクトへの耐性が強い」と評価され、

全世界に2200店舗以上展開し、

40万人以上の従業員が働いている、

現在は売上高10兆円企業の、原点を振り返ってみました。



「ホーム・デポという企業をブランドに育てたEDLP」という章では、

意外なつながりが発見できます。(以下引用)

 

  エブリデイ・ロー・プライスのヒントは、

  最初にプライス・クラブから学んだが、

  決心がついたのは、サム・ウオルトンによってである。

  ウオルトンはどこに行っても、必ずホームデポの店舗を視察に来た。

  第1号店を開店したときも、業界関係者で最初に視察に来た。

  お互いの店を見て歩いて、アイデアを交換し、メモをとる。

  お互いに、高いレベルでの友情を持った競争相手である。

  ウオルトン氏との会話

  「われわれみたいに、エブリデイ・ロ・プライスをやったらどうかね?」

  「やるべきだよ」

  その後、社内で膨大な議論が戦わされた後、決定が下された。



「企業ビジョンを売り込んでメーカーとパートナー関係をつくれ」という章では、

20世紀最高のCEOとの、SCMに関する会話も楽しめます。(以下引用)

 

  ホーム・デポは、もっぱらGEの電球だけ売ってきた。

  大きな棚スペースをとったら、どんなベンダーでも降参する。

  ところがGEは、配送量も時期も守らなかった。取引は中止になった。

  数千万ドル分の注文を、別会社に切り替えた。

  心配した創業者のバーニーは、GEの会長ジャック・ウエルチに会い、

  「GEは月に人間を送り込むことはできるが、

  店に60Wの電球を送ることができない」と言った。

  ウエルチは取引中止の理由を聞くと、すぐに手を打った。

  彼は店に商品がちゃんと入るのを確認し、ホーム・デポとの関係が改善されるまで

  目を離さなかった。 



「とにかく企業規模が拡大すればいいのではない、着実な成長こそ重要だ」という章では、

「オレンジを育てる(オレンジ色のユニフォームにかけている)」という

ホーム・デポ社内の言葉を実感できます。(以下引用)

 

  ある商勢圏に3~4店舗の店を出す代わりに、1~2店舗にしておいた。

  どの店にも確実に的確な人間を配置したかったので、

  訓練に膨大な時間とエネルギーを割いた。

  それさえできれば、あとでいくらでも店は出せる。

  アソシエイツが確保できるかどうかが問題だった。

  選抜がきわめて重要だった。

  選ばれた人々は、優秀な人材になった。



本では他にも

・クビになった49才の男が、創業した時の信念と出会い

・店で客が「ワオ!」と叫ぶ体験ができるカスタマー・サービス

・ハリケーン襲来時の対応力

など、ためになる、面白い話が満載です。

 

ご関心を持った方は、ぜひ読んでみてください!

 

来月のメルマガ〈随時版〉でも、

楽しく読める本をご紹介できれば幸いです!

コンテナ物語

■『ロジスティクス思考的経営話(物流話)280』powered by e-LogiT■20171026
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| 今回の物流話 | コンテナ物語(世界を変えたのは箱の発明だった)
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       株式会社イー・ロジット コンサルタント 鈴木まさゆき

今回は、物流の裏方さん、「コンテナ」に関わる話をいたします。


皆さんは「コンテナ」と聞いて、何を思い浮かべますか?

ハコ? バンニング? デバン? 船? 貨物列車? トレーラー?
シャーシ?
港で活躍する通称「キリン」が大量のコンテナを動かしている様子を
想像しておられるかもしれません。

私自身は「コンテナ」を見ると、映画「レインマン」の印象的な
オープニングシーンを思い出します。

ランボルギーニの輸入通関でトラブっている「トム・クルーズ」と、
軽快な曲「アイコ・アイコ」が頭に鳴り響きます(^o^)


今やグローバル・サプライチェーンにかかせない「コンテナ」。
その「コンテナ」は、実は、あらゆる商品の流通に関わっており、
すごく身近なものなのです。


そこで今回、物流に絡む本として「コンテナ物語」(日経BP社)を
ご紹介したいと思います。

副題は「世界を変えたのは箱の発明だった」で、
一人の企業家にスポットを当てながら、単なる箱である「コンテナ」が、
物流の重要な役割を担っていく様子が記述されています。


読んだ後には「コンテナ」のイメージがきっと変わるでしょう。


本の中では、企業家「マクリーン」氏が物流企業を大きく成長させていく
姿が描かれています。

・トラック1台からスタート後、「コスト削減の徹底」を武器に、
 他の運送会社を買収。

・「混んでいるハイウェイを走るより、海上を走る方が速い」と考え、
 船会社を買収。

・「船にトラックを乗せると車輪がじゃま。荷台のみで十分」と、
 船やコンテナの仕様等も変更。

・ 通称「キリン」(ガントリークレーン)も開発し、貿易でボトルネック
 港湾作業を効率アップ。

・ 船を大型化して、輸送効率アップを図る

と「輸送プロセス」を次々と改善する様子には、物流マンとして感銘をうけます。

輸送量拡大を追う過程で、結果「コンテナ」の規格化などにも関わっています。


またベトナム戦争時の話では、

・アメリカ軍が「兵站」の重要性を認識して、ロジスティックスの一部を
 民間に委託

ベトナムからアメリカへ戻る空コンテナを埋めるため、
 日本のエレクトロニクスを輸出

していく様子も描かれています。

前者は、ロジスティックスの語源「兵站」を実感できる部分ですし、

後者は、日本の輸出拡大の経済状況が思い出されます。


「コンテナ物語」では、急速にコンテナリゼーション化が進む中、

・市VS市・・・雇用の場所として、都市間での港の誘致争いの様子
・国VS国・・・グローバル・サプライチェーンの寄港地として国別の競争

という、輸送効率の拡大に伴う船と港の巨大化が描かれています。


企業家「マクリーン」氏が亡くなったとき、多くの船で汽笛を鳴らすという
ラストシーンはとても感動しますよ!


ビル・ゲイツ氏の「2013年記憶に残る本の一冊」としてとりあげられた
こともあるので、ご存知の方も多いかと思いますが、貿易の歴史が学べ、
物流の改善実例も豊富なので、ぜひお勧めしたいと思います。


まだ未読でご興味を持った方は、ぜひ読んでみてください(^o^)!

 

当時、日本にコンテナ船が初めて寄港した姿を見て驚いていた経営者が
いらっしゃいました。

海上コンテナオペレーションを見て驚き、システムによる合理化の威力を感じた」


そう、ヤマト運輸の故小倉昌夫氏です。名著「経営学」の中で触れています。


昨日の日経記事では、
商船三井が来月運航を開始する世界最大級のコンテナ船を公開」
「20フィートコンテナを最大2万個搭載できる」

と出ていましたね!

これまでの最大級のコンテナ船、エマ・マースクのTEUは18000。
今治で造船するためのドッグ改造から約2年で20000TEUのコンテナ船を作った
ことになります。


これからも海運会社の激しい競争は続きます。

直近では、韓進海運の破産も記憶に新しいですね。


私自身も前職で、結果コンテナ到着が3週間遅れて、お客様へ説明と謝罪した
事を懐かしく感じました。


「コンテナ物語」(日経BP社)

是非読んでみてください!

 

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シンク・スモール

■『ロジスティクス思考的経営話(物流話)292』powered by e-LogiT■20180320
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| 今回の物流話 | シンク・スモール!
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      株式会社イー・ロジット コンサルタント 鈴木 まさゆき

「シンク!」という言葉から、皆さんが思いつく企業は?

IBMの標語「Think(考えよ)」は、ワトソン氏と共に有名ですね。
パソコンのブランド名「Think Pad」って、そこが由来ってご存知でしたか?

また素晴らしいCMを見せてくれた
Appleの「Think Different」キャンペーンは、印象に残っていますよね!
20年前に感動したCMのナレーション「The Crazy Ones」全文を、
私は何年も自宅の壁に貼ってます!

「Think Small !」
あの「ウオルマート」創業者のサム・ウオルトン氏が、
人生の最後に全力をあげて書き上げた本から、
この言葉を取り上げてみました。

今回のメルマガでご紹介したい本は、
「私のウオルマート商法 すべて小さく考えよ」
渥美俊一+桜井多恵子【監訳】(講談社+α文庫)2002年出版
オリジナル「Made in America My Story」by Sam Walton(1991)
です。

その中で「Think small (小さく考える)」の章から、
少し長いですが、一部引用させてもらいます。

「....これらの発想は「小さく考える」思考から生まれた典型的な例である。
私のお気に入りは、物流部門のアソシエートから出た案だ。
彼女は、わが社には全米一の配送部隊があるのに、
物流センターの備品の配送はなぜ外部に委託しているのか、と疑問をもった。
そして、自社のトラックの帰途に物流センターの備品を持ち帰らせることを思いつき、
それによって50万ドル以上の節約をしてくれた。
私たちは、彼女を土曜会議に招き、報奨金を出してその功労を讃えた。
わが社には40万人の従業員がいることを思えば、
まだまだ多くの素晴らしい改善案が眠っているのは明らかだ。」

ウオルマートが小売業NO.1であり続ける理由が、
垣間見えると感じませんか?
この章「小さく考える」では、他にも、

大企業病にならないためには?
・組織をスリムにして、官僚化と闘う
・1店ごと、お客1人ひとりに向き合うには?
・コミュニケーションの重要性
・現場への責任と権限委任

と、我々が今も悩んでいる事を
サム・ウオルトン氏がどう考え、どう行動してきたのかを教えてくれてます。

大企業にいてもベンチャーのように考え行動する
「Think Small!」いい言葉ですよね!

また本では物流に関する話もかなり割かれています。
成功後ユニークと思われていた出店戦略も、(長文の引用ですみません)


「ディスカウントストアの草創期、すでに
物流システムのある大手の企業は、全国規模で多店化をはかっていた。
だが、大手が大都市から大都市へとジャンプしている隙間に、
わが社にとってのビッグ・チャンスがあったのだ。
ウオルマートの出店戦略は必要に迫られて生まれたものだが、
ごく初期の段階で、私たちはそれを独自の出店戦略として捉えてきた。
店を物流センターの守備範囲内に置き、管理できるような方法が必要だと考えた。
そのためには、物流センターから車で1日の走行距離内に出店する必要があった。
そこで、物流センターを中心にできるだけ遠くに出店立地を見つけ、
そこに次々と店を出していった。
こうして、1つの商勢圏が飽和状態になるまで、群から群へ、州から州へと
地図を1つづつ塗りつぶすように出店していったのである。」


ロジスティクスに関わる人間として読んでいて興奮する部分です!
制約条件も結果成功条件としてしまう。
まさにしっかりした物流戦略を持つ企業が大成功した例ですよね!

新たな物流センターを計画している方には、
実際の苦労話などもあり、役立つ本だと思います。

もちろん
「ディスカウントストア」スタートの経緯
「エブリデイ・ロープライス」の理由
「アソシエート」(従業員)とのよりよいパートナーシップ
といった、ウオルマート成功のキーワードも、
20世紀最大のアメリカンドリームを成し遂げた創業者が、
熱く語ってくれます。


「私のウオルマート商法 すべて小さく考えよ」
ご関心を持った方は、ぜひ読んでみてください!

 

次の物流話〈随時版〉でも、わくわくする!物流関連の書籍を
ご紹介できれば幸いです!

 

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FedEx

■『ロジスティクス思考的経営話(物流話)288』powered by e-LogiT■20180220
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| 今回の物流話 | 世界の物流革命をリードする燃える集団
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      株式会社イー・ロジット コンサルタント 鈴木 将之

「世界の物流革命をリードする燃える集団」と聞いて、
皆さんはどの企業が思い浮かびましたか?話題のベンチャーU?

これは、30年程前の翻訳本「フェデラルエクスプレス
TBSブリタニカ,上之郷 利昭訳,1986年)のサブタイトルです。
オリジナルはRobert A.Sigafoos「Absolutely Positively overnight」
(St.Luke’s Press,1983)。

メンフィス州立大学教授が、創業10年弱のベンチャー企業FedEx」の
現場にインタビューし、日本参入も果たした急成長時期に書いた本です。

FedEx=国際宅急便としてブランド認知している方も多いと思います。
本の一部ですが、そのアイデア実現のわくわくする雰囲気を少しでも
お伝えできればと思います。


1.創業者フレデリック・スミス氏が、大学時のレポートで、

  ・コンピュータ部品、薬品のような時間が勝負の小口貨物は、
   巨大なマーケットになる。

  ・当時の航空貨物輸送サービス(集荷、航空会社、配達が別会社)は、
   時間がかかり途中で荷物追跡できなくなるなど、輸送システムの
   非効率がある。

  ・航空貨物は、既存の旅客サービス用の路線システムでは、
   技術的にも対応できず適していない。

  ・量が増えてもコストが下がらない為、経済的にも、貨物の為に
   特別設計されたシステムが必要だ。」

  と、早い段階でフェデックスの基本構想を発表していた事には、
  驚きました。50年前の話!

  厳しい航空規制で実現不可と、レポートを「C(可)」評価したエール
  大学教授を考えると、いつの時代も素晴らしいインスピレーションは
  評価されにくいのかもしれません。


2.大学卒業後、ベトナム戦争に2回従事した事も、

  ・それまで特権階級の若者としかつきあいがなかったが、下層階級の
   兵隊を指揮し、勇気ある行動を見て、苦悩を共にできた。部下が何を
   考え、望んでいるかという、一般従業員への理解を深めることに役立てた。

  ・創業後の複数の倒産危機も「この世の終わりではない」と考え、
   戦争で身につけた頑強な精神で持ちこたえる。」

  などフェデックスの急成長に反映させています。

  当時から続く愛社精神や企業文化を知ると「フォーチュン」の
  「世界で最も称賛される企業」の上位常連である事も納得できます。


3.その後、運送会社として成功した父からの遺産で、飛行機修理を手掛ける
  会社を買収し、3年で輝かしい実績を残していました。
  そしてコンサルタント会社2社の市場調査結果で確信し、ついにアイデア
  「翌朝配送(オーバーナイトデリバリー)」を実現し始めたのです。

  大学卒業から5年弱もあたためつづけた情熱と実行力には感動します。


4.物流用語「ハブ&スポーク・システム」

  すべての道は、ローマならぬ、メンフィスに通ずる!

  これは、当時大手の貨物フォワーダーを敵に回しながら、どんな小都市
  にも翌日配達サービスを提供するために、トラック会社の配送システムや
  電話会社の切替システムなどからヒントを得たとの事です。

  業務開始前に1時間あたり1万個の荷物を取り扱えるハブシステムが
  完成していましたが、1973.3.12(オペレーション初日)の集荷数は、
  たったの6個!

  だが急ぎの小口貨物と書類が巨大なマーケットになると他社が気づいた後でも、
  サービス・信頼性を差別化にシェアをとりつづけたのです。

  40年以上も成長し続ける創業者スミス氏に尊敬の念を抱いております!

 


さてご紹介の本ではほかに、
40年程前の現場の様子が、現在の事?と間違えるほど、生き生きと
記述されています。

20年前に買った本ですが、数年おきに刺激を受け、創業者のアイデア
常に新鮮に感じます!「温故知新」

 

前回の物流話280で、海「コンテナ物語」をとりあげたので、
今回の物流話288では、空をテーマにしてみました。

次の物流話でも、わくわくする!物流関連の書籍をご紹介できれば幸いです!

 

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鈴木まさゆき

 

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